障害児教育にかかわる状況(04.9.14)
1. 中教審特別支援教育特別委員会に中間報告(案)が提案されました
昨日(13日)開催された特特委員会に、予想されたように中間報告(案)が提案されました。主な特徴は以下の通りです。
@ 特別支援教育の在り方最終報告の、内容と枠内での制度検討課題を示した内容です
*場の教育から、「特別支援教育」への転換
A この間の運動を無視し得ない記述が見られますが、具体的な施策のなかでは、実質的な 予算的保障の可能性は見えてきません。国の責任を放棄しつつ、地方に責任を丸投げ される危険性も考えておかなければなりません。次項から見るように、具体的な施策は徹 底して「既存の人的・物的資源の再配分」の姿勢に貫かれています。
* (「特殊教育」から「特別支援教育」への、用語を含む関連法令の検討をすすめるが、)「こ のことは、従来の特殊教育が果たしてきた役割や実績を否定するものではなく、むしろ、こ れを継承・発展させていこうとするものである。したがって、特別支援教育は、これまでの特 殊教育の枠組みの下で培われてきた教育水準や教員の専門性が維持・向上できるような 方向で推進されることが必要」
* (「特別支援教室」は有効なシステムである。)「一方、現行の特殊学級等を廃止して特別 支援教室(仮称)」に転換することに関しては、固定式の学級にも障害の種類や程度によっ ては一定のメリットがあるとの指摘や、特殊学級に在籍する児童生徒の保護者の中に現行 制度の維持を望む声もみられた。」
* 「制度的な見直し等を進めるに際しては、厳しい財政事情や義務教育費国庫負担制度の 改革の動向を踏まえつつ、教職員配置等の条件整備についても併せて検討する必要があ る。」
B 教育基本法改悪の教育の機会均等の理念の転換など、「教育改革」を先導する位置づけとしています。
* 「児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導等を行うという考え方が学校全 体に浸透することにより、当該学校における児童生徒の学力の向上につながる効果も期 待される。」
* 「特別支援教育の理念と基本的な考え方が普及・定着することは、現在の学校教育が抱 えている様々な課題との関連においても、積極的な意義を有するものと言えよう。」C
障 害種を超えた特別支援学校が強く打ち出されています
* 現在の盲・聾・養護学校を、障害種を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)とするこ とが適当である。
* 特別支援学校は、基本的には5種類の障害と重複障害に対応した教育を行う学校制度と することが適当。
* 最終報告では「教育部門」を設けることが提言されているが、「併設養護学校の中には部 門を設けることなく柔軟な運営を行っている例があり、特別支援学校では、障害に応じた 弾力的な教育課程や指導方法による教育の実施が求められていることから、法令上の組 織として「教育部門」を設けるのではなく、そのような組織を設けるかどうかを含め、具体的 内容は設置者等に委ねることが適当である。」
* 特別支援学校の配置は、地域の事情に応じ判断される
* 教育課程については、障害種別を超えたグループ別の教育課程編成の可能性や、「個別 の教育支援計画」との関係について引き続き検討を行う。
D 特別支援学校のセンター機能が条件整備することのない中で出されています
* 「特別支援学校の機能として、小・中学校等に対する支援などを行う地域の特別支援教育 のセンター的機能を、明確に位置付けることを検討する必要がある」
* 形態や、配置は、「各都道府県等において検討されるべきもの」
* センター的機能については「各学校の事情に応じて弾力的に対応できるようにすることが 適当である」
* 期待されるセンター機能として六つ例示し、特に次の三つの機能が重要としている
@「小・中学校等の教員への支援機能は、個々の児童生徒の指導に関する助言・相談の ほか、個別の教育支援計画の作成に当たっての支援」
A「相談・情報提供機能は、地域の小・中学校等に在籍する児童生徒や保護者への相談・ 情報提供のほか、幼稚園・保育所における障害のある幼児への教育相談」
B「障害のある児童生徒への指導機能は、小・中学校の児童生徒を対象とする通級による 指導や巡回による指導」
* そのための体制整備として「校長のリーダーシップの下に、各学校に求められる役割に応 じて目的・目標を明確にして、組織や運営の在り方を再構築し、その成果を定期的に評価 するなど一層効果的な学校経営」「センター的機能のための分掌や組織を設けることなど 、校内の組織体制を明確にすること」
E 小中学校での制度の基本を転換します
* これまでは主として特殊学級等、今後は学校全体の課題として
* 通常学級を含め、関連法令等で位置づけについて検討
F LD・ADHD・高機能自閉症等(等はアスペルガ−)について、現行制度を踏まえた対応に ついても記述されています。条件整備の必要を最小限にとどめようとする姿勢も感じられま す。
* 状態像は様々、周囲の環境によって変化することも多い
* 個別的かつ弾力的な指導及び支援が必要
* 指導及び支援の形態は、「通常の学級における教員の適切な配置、ティーム・ティーチ ングの活用及び授業時間外における個別指導を基本としつつ、必要に応じて、通常の学 級を離れた特別な場での指導及び支援を受けられるようにすることが有効」
* このため、通級による指導を弾力化してLD・ADHD・を対象に加えることや、「巡回によ る指導」の制度化について検討
* 特別の教育課程を編成して指導することが適当な者の範囲・要件や、その具体的な指 導内容・方法についても併せて検討
G 特殊学級等の見直しについては、二段階論になっています
* 特別支援教室とする場合の具体的な検討項目がしめされました
* 「場や空間を指して用いられることが多い「教室」を制度化するに際しては、「学級」編成 を基本とする公立学校の教職員配置システムとの関連をさらに検討することが必要」
* 「特別支援教室の構想が目指すものは、各学校に、障害のある児童生徒の実態に応じ て特別支援教育を担当する教員が柔軟に配置されるとともに、LD等の児童生徒も含め 、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍しながら、特別の場で適切な指 導及び必要な支援を受けることができるような弾力的システムを構築すること」
* 「引き続き、公立学校の教職員配置システムとの関連を含め、具体的な制度内容に関す る検討を進めると共に、当面、実践的研究」
H もう一つ、現行の特殊学級を弾力的運用の方向が出されました
* 特殊学級等については、特別支援教室の検討と併せて、以下のような弾力的運用につ いても検討を進める必要がある
* 特殊学級における交流及び共同学習の促進と担当教員の活用
* 特殊学級担当の教員は、学級の在籍児童生徒の指導に加え、通常の学級に在籍する 障害のある児童生徒に対する通級による指導と類似した支援や、いわゆる「巡回の指導 」を行ったり、通常の学級を担当する教員に対する相談支援の例
* 交流・共同学習や、特別支援学校のセンター的機能で、特殊学級担当教員は、通常学 級在籍児を含め、これまで以上に多様な役割りを担うことは可能になる
* 特殊学級を担当する教員の活用を一層促進することが必要である
I 通級による指導を見直す方向が出されました
* 指導時間数の制限を緩和
* 対象となる障害の種類にLD・ADHDを加える(高機能自閉症等は現在でも可能)
* など、特別支援教育の観点から弾力的な運用が可能となる方向で見直しを行う必要
J 「巡回による指導」が出されました
* 「巡回による指導のうち、定期的に実施されており、かつ、教育課程の一部として位置付 け得る内容であるものについては、その制度的な位置付けを明確化する必要がある。そ の際、いわゆる「巡回による指導」を受け入れる学校における授業時間の調整、指導に 当たる教員の身分、円滑な実施を確保するための仕組みについても併せて検討を行う 必要がある。」
* 「実施形態については、通級による指導と同様に、特別支援学校のセンター的機能や特 殊学級担当教員の活用も含め、多様な形態による弾力的運用を可能とすることが適当 である」
K その他、免許制度の見直し、個別の教育支援計画の学習指導要領等への位置付け、特別 支援教育コーディネーターの他の校務の軽減、今後の検討課題としての後期中等教育や 幼稚園等における特別支援教育の在り方などについて触れられています
○9月中の審議を踏まえ中間報告が提出されるのは、10月初旬になるものと思われます
○ 手記集作成のとりくみを強め、中間報告が出されたら直ちにパブリックコメントをたくさん出せる準備をすすめましょう
○ この案にも、ことばとしてではあっても反映せざるを得なかったように、一人ひとりの子どもたちの姿を踏まえた具体的なねがいは力を持ちます。
○ この案で、最も教育内容の維持・発展が軽視されているのは障害児学校であるように思えます。是非、次項の動向ともあわせて予測してみてください。障害児学校での父母との共同を強め、学習・論議・具体的な運動を飛躍的に強めましょう。
2. 河村文科大臣の、義務教育改革工程表について
9月9日、河村大臣は、8月に発表した義務教育改革試案の工程表を中教審の総会に示しました。「6・3制弾力化」、「小中一貫教育校設置の制度創設」などとともに障害児教育に関しても重要な指摘をしています。
第一は、前項の特別支援学校等、特別支援教育の制度改正を2005年に行うこと。
第二は、現在別建てとなっている養護学校国庫負担制度を、義務教育費国庫負担制度に取り込むことです。障害種を超えた特別支援学校に対応するということだけでなく、秋田県のように障害種を超えた特別支援学校で教職員を減らせば、それを小中学校でも自由に使えるしくみになります。通常学級の特別支援教育のために、また30人学級実現のために、さらにエリート校へ教員の重点配分をするために、障害児学校教員を減らすなどということが理論上は自由にできることになります。
第三は、2006年度に教育職員免許法などの改正を行う方針を明らかにしたことです。
3. 埼玉ですすむ手記集のとりくみ
埼教組障教部と埼高教障教部は合同で保護者の手記集のとりくみをすすめています。現在集まっている分を、中教審の全委員に送付しました。なんとお礼を含めて、5通もの返信が返ってきたといいます。
保護者の具体的な声は力です。是非、全国で手記集作成のとりくみを強め、地方議会での意見書採択運動、マスコミへの投書、そして中教審へのパブコメをはじめとする働きかけに活用しましょう。